斷熱材事業スタート
旭化成は、ダウケミカル社とともに合弁會社の旭ダウを設立し、1962年に押出法ポリスチレンフォーム「スタイロフォーム」という斷熱材の販売を開始した。旭化成の斷熱材の歴史はここから始まる。

サニーライトを発売
後に、旭化成はダウケミカル社と合弁を解消することになり、スタイロフォームの取扱いはなくなった。 しかし、斷熱材事業を継続したいとの思いから新たな素材の開発を行い、1984年、ポリエチレン系斷熱材「サニーライト?」を上市した。 サニーライトは濕気に強く、柔軟性が高く施工性能の良いことから、木造住宅の床用途に広く採用され大きく販売を拡大させていく。
「高性能で、燃えにくい 発泡系斷熱材を作りたい」
しかし、日本の建材業界には、耐火?耐熱性の高い発泡プラスチック系の斷熱材は存在していなかった。 そこで、旭化成は、これまでなかった斷熱材を世の中に出すため、「燃えにくい、高性能な、発泡系の斷熱材」の研究開発に取りかかる。 まず、三重県鈴鹿の研究所において、フェノール樹脂に目をつけて、フェノールフォームの研究が始められた。 フェノール樹脂とは古くからある樹脂で、他の樹脂に比べて耐熱?耐火性に優れている。鈴鹿の研究所にベンチプラントを設置し研究を開始するものの、2年後にこの研究は一時中斷となる。 一方、茨城県の建材研究所でも、1980年頃から同様に様々な斷熱材料を試して研究開発に取り組んでいた。これは燃えにくい斷熱材の開発の初期の試作品。 黒曜石を原料に作られた泡ガラス。十分な斷熱性能、生産性が出なかった。數々の試行錯誤の結果、建材研究所においても、素材として斷熱?耐火性に優れたフェノールがベストとの結論に至る。 そして、4年前に鈴鹿研究所で行われ、一時中斷となっていた研究のノウハウも引き継ぎ、さらに研究を深め発展させていく。
海外技術の調査へ
これまでの研究で判明したフェノールフォームをさらに改良するため、全世界のフェノールフォーム技術の調査を開始する。
その中から、最も優れていると判斷した企業から基礎技術の導入を決定する。
海外技術の導入へ
そして、95年から97年にかけて計4回、延べ約8ヶ月間にわたり、旭化成の技術陣を派遣し、製造技術の研究を行う。
第1回訪問時に作成したフェノールフォームの試作品。凹凸があるなど、 品質の安定した製品を生産することが困難であった。
旭化成の研究者と海外メーカーの研究者との會食。(第2回目の訪問時に撮影)
日本との往復、試作検討の繰り返しにより、安定生産技術を確立、數千m2分の試作サンプルを製造して、日本に持ち帰る。
ノンフロン発泡への挑戦
當時、斷熱材の発泡技術はフロン系ガスによるものが一般的であった。しかし、1990年代半ばから、オゾン層破壊や地球溫暖化につながるとしてフロン系ガスの問題が叫ばれ始めていた。 旭化成では、「ノンフロン発泡で事業化する」という方針を立て、「未知の技術」に向けてさらに研究を重ねる。そして、ノンフロンで長時間運転可能な製造技術を確立させる。こうして、業界で初めてノンフロン発泡された高性能斷熱材フェノールフォームを完成させた。
「パイロットプラント完成」
1998年、福島県小名浜にパイロットプラントが完成。その年の10月より、寒冷地の北陸と北海道を中心に、開発名稱「PF-21」としてフェノールフォームのリサーチ販売を開始した。 そして、1999年茨城県猿島郡境町に本プラントの建設に著手する。
市場リサーチ用カタログ
2000年秋発売予告カタログ

ネオマフォーム誕生
2000年夏、本プラントが完成。商品名を「ネオマ?フォーム」に決定し、10月よりネオマフォームの本格販売を開始する。ネオマフォームは、主に住宅分野の外張り斷熱工法に使用され、多くの住宅に使われるようになっていった。 ネオマフォームは、地球環境適合型の高性能斷熱材として評価を受け2001年(財)省エネルギーセンターによる「省エネ大賞」を受賞、2003年には「オゾン層保護?地球溫暖化防止大賞」を受賞する。 その後ネオマフォームは、斷熱性だけではなく高い耐火性能も評価され、非住宅の建築物にも採用を伸ばしていった。それらの分野の用途に向けて、ネオマフォームの複合製品として「ネオマフォームF」(02年)、「ネオマフォームDH」(03年)、「ネオマフォームUF」(05年)、「ネオマ耐火スパンウォール」(06年)と、次々と新製品を出していった。
2001年省エネ大賞受賞式。
旭化成建材當時社長鈴木氏。
また、ネオマフォームは、住宅分野?建築分野だけでなく、新幹線、飛行機など非常に高い性能が求められる分野においても使用されていった。 2005年にはネオマフォームのマテリアルリサイクルによる生産を開始する。 そして、2009年に広域認定も取得し、自治體を超えて広く廃棄物を回収することができるようになった。
平成21年度全國発明表彰
(主催:社団法人全國発明協會)の「発明賞」を受賞
同年ネオマフォームは、平成21年度全國発明表彰(主催:社団法人発明協會)において「発明賞」を受賞した。これは「ネオマフォームの、気泡の微細化の構造、気泡壁に孔のない高い獨立気泡率の構造」という優れた技術が評価されたものである。
斷熱の大切さを広く知ってもらうために
2006年、ネオマフォームと、住まいを斷熱することの大切さを広く知ってもらいたいとの思いから、ネオマフォームのテレビCMを一年間行う。 これは、自然をテーマにしたミニ番組「ibuki」を協賛する形で行ったものだ。 斷熱についてわかりやすく解説した絵本「『斷熱しようョ!』快適環境BOOK」、及びDVD「よくわかる外張り斷熱解説ドラマ『凜ちゃんちと優くんち』」を制作し、幅広く認知活動を行った。
テレビ番組「ibuki」ポスター

ジュピー誕生
2010年、ネオマフォームの高い斷熱性能をそのままに、床の充填をしやすいように改良したフェノールフォーム斷熱材を開発し、「ジュピー?」として上市する。
被災地復興への協力
2011年3月11日東日本大震災。茨城県猿島郡にあるネオマフォーム工場も甚大な被害を受け、生産ストップとなる。以後、懸命な努力の結果、4月下旬より復舊となる。 東日本大震災の復興支援のため、ネオマフォームを通して、復興支援事業に積極的に協力をしている。 そのうちいくつかの事例をご紹介する。
ネオマフォームが採用された復興関連施設
巖手県陸前高田市
まちのリビングプロジェクトにおける仮設カフェ「りくカフェ」
施工:住友林業株式會社
東松島市
ひびき工業団地の仮設住宅 敷地內で建設された、木造仮設診療所 (北原ライフサポートクリニック東松島)
施工:住友林業株式會社
石巻市桃浦
『牡鹿半島のための地域再生最小限住宅「板倉の家」』
企畫:アーキエイド
協力:つぐっぺおらほの復興家づくりの會
施工:有限會社 後藤建業
実績と評価
2012年、建築家や研究者?施工者?建材メーカーらで構成されている研究活動の一環として、2011年より毎年「優れた建築を生み出すことに貢獻しうる、優れた建材?製品」に贈られている「HEAD ベストセレクション賞」を受賞。 ネオマフォームが誇る難燃性?斷熱性の高さに加え、結露しにくい點やコストパフォーマンスの高さが挙げられ、木造住宅の外張り斷熱工法に必須の斷熱材として高く評価された。 また、日経BP社発行の建築総合情報誌「日経アーキテクチュア」2012年12月10日號の「採用したい建材?設備メーカーランキング2012」にて「斷熱材」「戸建て住宅用外張り斷熱工法」部門で3年連続第1位に。 また同社発行の家づくりの実務情報誌「日経ホームビルダー」2013年1月號の「採用したい建材?設備メーカーランキング2012」「戸建て住宅用外張り斷熱工法部門」でも第1位に選ばれた。 この調査は一級建築士や住宅建設の実務者など約5萬2000人を対象にしていた國內最大規模の調査で、日経アーキテクチュアでは3年連続第1位であり、過去8回中7回第1位を獲得している。
HEADベストセレクション賞
同年5月には「昨日まで世界になかったものを。」をスローガンとする旭化成グループの全社CMにネオマフォームが取り上げ られた。 「問題/暑さが人災になっている。」がテーマのこのCMは、「ヒートアイランド現象」の原因となる家庭からの熱の排出を抑制し、 省エネに貢獻する畫期的な斷熱材を開発したことを報告している。
サニーライト販売終了とジュピーフルプレカットサービスの開始
2013年3月、約30年にわたって販売をしてきたサニーライトを販売終了する。これは、住宅の高斷熱化の流れのなかで、サニーライトの役割に一つの區切りがついたためである。 そして、サニーライトの後継品となるジュピーの生産を増強するため、及び、ネオマフォームをさらに市場に供給していくため、ネオマフォーム工場を増設することが決定され、建設が開始された。 同年には、ユーザー提供の建築図面から、床斷熱材のパーツの拾い出しと寸法カットを行う、ジュピーの「フルプレカット」を開始。現場加工をなくすことで工期短縮、廃材の削減、施工品質の安定に貢獻するサービスとして支持されている。これに対応するため全國に斷熱材加工のストックポイントを整備した。
工場製造ラインの増設、 斷熱リフォームの取組み、
省エネ基準を超える住宅の 研究と提案
ネオマフォーム工場の製造ライン増設完了
2014年3月、ネオマフォーム工場の増設工事が完了。 4月より本格稼働が始まる。製造ラインの増強により市場への供給が強化された。 これにより準耐火建築物に対応の「ネオマフォームFS」、斷熱リフォーム専用「ネオマ斷熱ボード」、また、高斷熱?低燃費化を見 據えてネオマフォームの厚物品(80mm?95mm?100mm)が次々と新発売された。
ネオマフォームFS
ネオマ斷熱ボード
ネオマフォーム100mm
斷熱リフォームの取組み
石膏ボードとの複合品「ネオマ斷熱ボード」の発売によって、既存住宅の省エネ化と居住性改善を目的とした斷熱リフォームの 本格展開を開始した。既存の內裝材を極力活かす內張り斷熱工法と、居住部分だけを改修する「ゾーン斷熱?」によって、生活 者の負擔の少ない住みながらの斷熱リフォームを提案。また、産官學連攜の高斷熱化が健康に及ぼす影響調査に參畫、以後、 斷熱リフォームの普及活動を継続している。
省エネ基準を超える住宅の研究と提案
①「快適空間研究所」の設立
2014年、室內の溫熱環境の研究とマーケティング活動を行う「快適空間研究所」を設立。 「あたたかい暮らしの実現」を目指した調査、情報発信、啓発活動を開始した。
②「ニホンノ家ハサムイデス」新聞広告
2014年、「健康を守る斷熱材へ。」というコンセプトのもと、全國規模の新聞?雑誌に「ニホンノ家ハサムイデス」というキャッチ コピーで広告を掲載。日本よりも冬の寒さが厳しい國から日本に移り住んだ人が、日本の冬の家の寒さに驚く事例を通じて、斷 熱材の必要性を訴える內容。同年の複數の広告賞を受賞し、話題を集めた。
③「快適空間ラボラトリー」開設
2017年1月、「快適空間研究所」の研究成果として茨城県猿島郡境町に「體験棟」と「展示棟」からなる「快適空間ラボラトリー」 が完成。「體験棟」は宿泊體験が可能で、夏?冬ともエアコン1臺で家全體が快適な暮らしを體験することができる。「展示棟」は 素材や設備の展示の他、説明パネルや実験模型などにより、これまでわかりにくいとされてきた溫熱環境や斷熱性能に関する 知識を楽しく學べる場となっている。
④「NEOMA-Box」の提案
2017年6月、省エネ基準を超える住宅の入り口にあたるZEH(ゼロエネルギー住宅)の規格住宅である「NEOMA-Box」を開 発。間取りや部材を含めZEHに必要な要素と営業支援ツールをパッケージ化することで、幅広いユーザーのZEH対応を支援 することを目標としている。

ネオマゼウスの開発とネオマブランドの再編
2017年、ネオマフォームの特長を活かしつつ斷熱性(0.018W/(m?K))および環境性能を向上させたネオマゼウスを開発した。これに伴い「ジュピー」の名稱を「ネオマジュピー」に変更、ブランドロゴの統一に加え、ネオマフォームを含めた製品表面デザインを一新した。
長期斷熱性能を國內初の測定、
環境負荷低減への貢獻に対し2つの受賞
ネオマフォームの長期斷熱性能測定の取組み
これまで、発泡プラスチック系斷熱材の特に高性能品では、時間の経過に伴って斷熱材中の発泡ガスと空気の置換によって斷熱性能が低下することが指摘されてきた。そのため歐州では住宅?建築物の斷熱性能評価には、長期性能を加味した基準が設けられており、國際規格ISOでも「斷熱材の経年劣化-獨立気泡プラスチックの熱抵抗の長期変化の測定」(ISO11561)が制定されている。日本でも2005年から2010年にかけての國立研究開発法人 新エネルギー?産業技術総合開発機構(NEDO)委託事業による研究を経て、ようやく2014年に「発泡プラスチック系斷熱材の熱抵抗の長期変化促進試験法(JIS A 1486)」が制定された。そこで、2018年に(一財)建材試験センターにて、JIS A 1486に基づくネオマフォームの長期斷熱性能の測定結果が行われ、50mm品の25年間の平均熱伝導率が0.020W/(m?K)であることが公表された。
こうした流れを受けて旭化成建材は、長期にわたって使用する斷熱材の長期斷熱性能の大切さを訴求するため、ツールの充実や広告展開を進めた。2019年には月刊Smart Houseにおいて斷熱材の長期斷熱性能に関する特集が連載された。ここでは斷熱材の長期性能の規格化の道のりと重要性、ネオマフォームの長期斷熱性能のメカニズム等が、様々な分野の人々への取材を通じて解説されている。
環境負荷低減への貢獻に対し2つの受賞
2018年、ネオマフォーム製品化技術の開発と普及による省資源?省エネルギー化およびCO?排出量削減への貢獻が評価され、 (公社)新化學技術推進協會グリーン?サステイナブル ケミストリーネットワーク會議の「第18回GSC賞 環境大臣賞」を受賞した。 同賞はグリーン?サステイナブル?ケミストリー(人と環境にやさしく、持続可能な社會の発展を支える化學)の推進に貢獻する優れた業績を挙げた個人、団體が対象。 なかでも環境大臣賞は「総合的な環境負荷低減に貢獻した業績」に対し授與される。
2020年には、ネマフォームの開発が環境負荷低減に顕著な効果をもたらし、 日本の科學技術の進歩と産業の発展に大きく寄與するものとして、(一社)日本化學工業協會の第52回日化協技術賞環境技術賞を受賞した。
ネオマフォーム&ネオマジュピーの統合
~床充填専用斷熱材「ネオマジュピー」の生産を終了~
床斷熱専用のフェノールフォーム斷熱材「ネオマジュピー」の生産について2020年12月末をもって終了し、同用途向けを「ネオマフォーム」に統合した。
「ネオマジュピー」は、斷熱等性能等級4が求められる床用途向けに開発された製品だが、 ZEH基準やHEAT20水準等、等級4を超える高斷熱化が進んできたことから、「ネオマジュピー」の生産については2020年12月末をもって終了し、 同じ斷熱性能(熱伝導率)でより幅広い製品展開が可能な「ネオマフォーム」で代替。 これまで「ネオマジュピー」で行っていたプレカットなどの加工対応については、 「ネオマフォーム」で同様に実施。 また、「ネオマフォーム」の製品ラインアップに厚さ90mm品を追加し、床用途に向けた高斷熱化への対応をより強化した。
旭ファイバーグラスとの合同プロジェクト The way to G3のスタート
高斷熱住宅の更なる普及に貢獻する為に旭ファイバーグラス㈱と合同プロジェクトを発足
これまで歐米の基準と比べ、大幅に低かった日本の斷熱基準に、HEAT20 によるG2、G3水準ができ、ようやく肩を並べる水準が示された。 2021年、旭ファイバーグラスと旭化成建材は、斷熱材素材間の垣根を取り払い、 繊維系斷熱材と発泡プラスチック系斷熱材を組み合わせた理想的な仕様例を作成した。
旭化成建材は斷熱材を通して地球環境問題に貢獻する活動にも注力している。 地球環境問題と斷熱材をテーマにした出張授業を行うなど、様々なレベルで地球環境への取り組みを広げようとしている。 また、毎年、環境問題を集めた展示會「エコプロダクツ展」にも出展、幅広くネオマフォームの技術を伝えている。
2014年8月巖手県
高校生を対象に「旭化成の描く近未來の暮らし」と題し、
旭化成グループの事業紹介や環境への取組み、物造りを通して見る未來への想いなどを伝える授業を実施。
2008年3月高校生を対象に
地球溫暖化問題と斷熱材について授業を実施。
2012年岐阜県の保育園
木育モデル園プロジェクトにおいて、園児に対する「だんねつ」の授業を実施。
2020年、発売20周年を迎えたネオマフォームは理想の斷熱性能を広め、持続可能な社會を実現するために新しい20年の歩みを始めた。